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E くろがねの馬の物語

佐々木桔梗とプレス・ビブリオマーヌ[15]

『E くろがねの馬の物語』佐々木桔梗
1970.9
プレス・アイゼンバーン

ビブリオマーヌ以外の刊行ながら、ビブリオマーヌの本のような桔梗氏の著作に『E くろがねの馬の物語』がある。刊行は当時、松本謙一氏が主宰していたプレス・アイゼンバーン。この名称はビブリオマーヌの影響だとか、同社初期の『煙』や『HUDSON C62』などといった豪華本もビブリオマーヌの影響だろう。
『E くろがねの馬の物語』は、入間川の河原に放置されていた鉄道連隊のEタンクを題材としたもの。夜間のライティングによって浮かびあがったEタンクが役者のごとく、かつての栄光を語るという小説仕立ての作品になっている。
文庫本サイズのわずか32ページの本だが、それ故、可愛らしい魅力のある一冊。いのうえ・こーいち氏も、後に同じ装本の『糸魚川のポプラの木』など、“白い小さな本”シリーズを刊行している。
白の並装のほかに草色の布装が469部、特装が31部ある。特装版は、表紙に18金刻印の蒸機のシルエットを嵌入した白の総革装で、渋い藍の布装夫婦函に納まる。

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雑誌にみる佐々木桔梗の著作

佐々木桔梗とプレス・ビブリオマーヌ[16]

桔梗氏は鉄道専門誌にも数多く執筆した。なかでも「鉄道ジャーナル」には、1977年から1984年にかけて毎号のように執筆、「鉄道趣味の内側と外側 ポスターと書物のドラマ」(No.131 1978.1-No.160 1980.6)や「旅と文学と鉄道趣味 LE TRAIN FOU NHK・FM クロスオーバー・イレブンのための“汽車馬鹿”87の短篇」(No.161 1980.7-No.190 1982.12)は、ともに30回も続く連載となった。
「ポスターと書物のドラマ」は、20世紀初頭に制作されたヨーロッパの鉄道ポスターを中心に、同時代の日本の捕物帳など、鉄道とは関係のない書籍も紹介した異色のエッセイ。
「LE TRAIN FOU」は、副題にもある通り、NHK・FMの深夜番組として放送されていた「クロスオーバー・イレブン」向けのスクリプトを載録し、解説を加えたもので、毎回、ページの彩りに、内容とは関係のないホテルのラベルを載せている。
桔梗氏が「クロスオーバー・イレブン」を担当したのは、番組が始まって間もない1978(昭和53)年の12月から翌年の3月、テーマは、ヨーロッパを中心とした旅と鉄道だが、万人向けとは思えない、氏ならではのマニアックな話題が展開する。
自身のナレーションの合間に流れた音楽に関しては詳しく触れていないが、度々エッセイで取り上げたオネゲル作曲「パシフィック231」同様の描写音楽、クラフトワークの「ヨーロッパ特急」については関心を示し、「長い走行曲は聴く者を魅了した」と記している。
「鉄道ファン」には、「鉄道ファン・フォトサロン 佐々木桔梗作品集・消えゆく都電」(No.89 1968.11)といった一般的な鉄道写真のほか、「鉄道写真のあり方」(No.74 1967.8)のような写真論、「流線形礼讃!」(No.162 1974.10)をはじめとする、その後にビブリオマーヌの書籍となったエッセイなどがある。
特筆したいのは「写真随筆 自動乗物と流線形C53」(No.81 1968.3)。戦前の浅草松屋の屋上にあったケーブルカーと豆汽車を紹介したエッセイで、当時から既にこうしたものにもカメラを向けていたことに驚く。
また、「特集:食堂車」に合わせた「メニュー雑感」(No.194 1977.6)では、戦後の一時期、大宮にあった「汽車のまち商店街」の、客車を改装した居酒屋の写真も載せている。
鉄道専門誌以外では、「カメラビュー クラシックカメラ専科」No.26、27(1993.9、1993.12・朝日ソノラマ)掲載の「わたしの昭和ものがたり 汽車・カメラ・写真書」が、桔梗氏の鉄道とカメラとの関わりを知るうえで恰好の資料となる。
「宮沢賢治」No.17(2006.6・洋々社)掲載の「「銀河鉄道の夜」と原風景」は最晩年の作品。氏は、「銀河鉄道の夜」の絵本に登場する汽車の多くが、いわゆる国鉄型なのが不満だったようで、小説のイメージとなった岩手軽便鉄道について詳述。また、古城武司が描いた漫画版の「銀河鉄道の夜」(1984・講談社)に登場するシェイ・ギヤードについても触れている。

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