E くろがねの馬の物語

佐々木桔梗とプレス・ビブリオマーヌ[14]

『E くろがねの馬の物語』佐々木桔梗
1970.9
プレス・アイゼンバーン

 他社の刊行ながら、ビブリオマーヌの本のような桔梗氏の著作に『E くろがねの馬の物語』がある。刊行は当時、松本謙一氏が主宰していたプレス・アイゼンバーン。この名称はビブリオマーヌの影響だとか。同社初期の『煙』や『HUDSON C62』といった豪華本もビブリオマーヌの影響だろう。
 『E くろがねの馬の物語』は、入間川の河原に放置されていた鉄道連隊のEタンクを題材とした写真集。夜間のライティングによって浮かびあがったEタンクが役者のごとく、かつての栄光を語るという小説仕立ての作品になっている。
 文庫本サイズのわずか32ページの本だが、それ故、可愛らしい魅力のある一冊。いのうえ・こーいち氏も、のちに同じ装本の『糸魚川のポプラの木』など、“白い小さな本”シリーズを刊行している。
 白の並装のほかに草色の布装が469部、特装が31部ある。特装版は、表紙に18金の蒸機のシルエットを嵌め込んだ白の総革装で、渋い藍の布装夫婦函に納まる。