流線形物語

佐々木桔梗とプレス・ビブリオマーヌ[4]

『流線形物語』佐々木桔梗
1974.10・限定455部
プレス・ビブリオマーヌ

 1930年代に流行した流線形の、主に蒸気機関車を、同時代の文学作品と併せて紹介したもの。満鉄「あじあ」が登場する大場白水郎の俳句などの紹介は著者ならでは。戦時中に鉄道省の監察官・湯本昇が提唱した西安-バグダード間7500キロを結ぶ中央アジア横断鉄道や、それによって東京-パリ間17000キロを10日間で走るという幻の流線形高速列車「シルクロード特急」にも思いを馳せる。
 『流線形物語』には機関車の切手に関する記述も多いが、本文ページに印刷された切手の写真は、どれもコピーのように粗い。これは蔵書家が、いずれ本物の切手を入手して、その上に貼るためだという。
 文章に添えられるペン画は、当時10代だった桔梗氏の娘さんによるもの。アルバイトで描いてもらったらしい。
 「鉄道ファン」No.162(1974.10)の特集「流線形車両」に掲載された「流線形礼讃!」は本書の抜粋版で、機関車の切手に関する文章などが割愛されている。

 装幀には“重症患者専用車”(53部)、“軽症患者専用車”(152部)、“グリーンA寝台車”(250部)と称する3種類がある。重症患者専用車は、白の総革装。表には『荷風「ふらんす鉄道物語」』と同様、特急「ミストラル」の売店で入手した「LE MISTRAL」と書かれたトランプカードがつく。また、革装の中にはボールベアリングが入れられ、本を振ると列車の走行音のような音を奏でる仕掛けになっている。軽症患者専用車(画像のもの)は、ドイツの流線形蒸機05の形をした題簽に汽車の絵柄の布装。これはブラウスの生地で、ある女性が着ていたのを街で見かけて尋ね、探し当てたものだという。